ワンマン用の最終リハーサルも終わり、前から調子が悪かったケーブルを修理して頂きに行ってきた。
3年前に購入したケーブルが、2月のライヴ中、突然に中途半端な壊れ方をした。
この中途半端な壊れ方とは、ある時は音が出て、あるときには出ないという、いくつもの原因が考えられる壊れ方を指す。
経験上だいたいここが悪いだろうくらいの目算はついていても、またわざわざ修理して頂くのも何だしなぁと思ったのでそのまま放置し、代わりに全く同じモノを3月頭に買って使っていた。
ソレが今回のワンマンのリハーサル中に新しく買った方も突然音が出なくなった。
2本共同じメーカーの同じ商品である。
しかも片方は買ってまだ2ヶ月。
メーカーさんには知り合いはいないが、日本代理店さんにはお世話になってるので敢えて商品名は伏せるが、それこそwash?の大ちゃんや、THE COFFEE & CIGARETTESの上ちゃんなら、あぁ、アレねってなるやつ。
ぼく、好きなんよ。この化学調味料の味が。
壊れるけど好きで使ってるミュージシャンも多い”怪物”ケーブル、一体どこがどんな壊れ方をしたのか、コレは知っておきたいなと思ったので、ちょっとハヤシさんに相談してみた。
もう一本同じものを買うのはさすがにまた壊れるのも怖かったし、決して安いモンでもない。
“んっなのめんどくせぇ”と断られたらソレは仕方ないとは思いつつ。
しかしハヤシさんも同様、”俺も原因を知っておきたいかな”と言って下さったので2人で2本共検証することになった。
ベースの錆びて回らなくなったネジも交換して頂きたかったので楽器も持参でハヤシさんの元へと向かった。
作業台の上、さぁさてさて検証してみますかねで、まずは古い方のケーブルのジャックを開けてみる。
2人してアングリ、、、。
正直コレがケーブルメーカーのお仕事ですか?と言いたくなるくらいにL側の絶縁、ハンダが雑過ぎる。
しかも構造的に無理もある。
ホットとボディ、近すぎ。
そりゃあトラブるよ。
でも販売店サイトには、”更に屈強になったジャック云々、、、”と書かれてあった。(現在は消えてる)
因みに全く怒ってる訳じゃないし、悪口を言いたい訳じゃない。
ただその書き方はユーザに対して優しくはないし、正しくもない。
物凄い企業努力によって出来るだけコストを抑え、少しでも安く提供してくれてるのかも知れないが、手作業で行った一番重要な部分がコレだとかえってメーカーさんの名前に傷がつくんじゃないかなと思う。
とりあえずL側は信用ならんという事で2本共、ケーブルの怪しい部分を少し切って新しいジャックに交換して頂いた。
コレでハヤシさん、お忙しい中すみませんでした、ありがとうございました、ライヴ終わったらまたゆっくりと、で終わるはずだった。
ハヤシさん、別のケーブルで今度はベースをチェック。
すると僅かにガリガリとノイズが、、、。
ありゃ?こちらもジャックか?
検証してみる。
いや、違う。
でも一応メンテナンス。
ピックガードを外してジャックにケーブルを挿したら鳴らない。
ボディにつけるとノイズ。
まじか?
もうここから先はぼくにはわからん世界やわ、、、。
ピックガードとボディのネジ下を絶縁。
塗装がイタズラをしてる可能性を潰す。
4月に既に完全に検証済みの接点、再度徹底的に検証。
でもまだやっぱりほんの少しノイズが鳴る。
ついにはハヤシさん、ベースをあちこち叩き出す。
するとトーンポッドあたりからノイズが。
“周平、コレ、変えるけど大丈夫か?”
“もちろんお願いします”
トーンポッドを交換。
やっとノイズが消えた。
つまりは複合的な原因によるノイズだったんだが、ぼくにはもはやノイズが消えたことより、その徹底的に検証して下さるハヤシさんの気持ちに、姿に、胸が熱くなり、心ん中で
“ハヤシさん、もう良いから、もう良いですから”
と叫んでた。
だからこそ思うの。
このケーブルを造った方がこのハヤシさんのこの姿をみたらどう思うのだろうか?
そして何かを感じるんだろうか?と。
別れ際に不器用な表情を浮かべ
“周平、家で試してもしまだライヴまでに不安があるならまたすぐ持って来い”と。
ちょっとだけ上を向いて歩くしかなかった。
バックヤードには、ハヤシさん指名で修理があがるのを待つ楽器達で溢れかえってる。
また一段と愛おしいベースと愛おしいケーブルへと産まれ変わった。
でも決してベースやケーブルが愛おしいんじゃない。
そういうことじゃない。
ハヤシさんが居て下さるからこそステージに上がれてる自分がいる。
ありがとう、ハヤシさん。
良いワンマンにするね。