□ my funny hitchhiker 『Two muffs beat as one』 Trailer
その、壊していく過程をもって観客に本質を伝えようとする不器用な方法論が好きだ。
楽曲やサウンドは著しく実験的なわけではないのに三方向に音が分散していく。
BANDの基本である、メンバーと出す音・鳴らすことが楽しくて仕方ない、ということがヒシヒシと伝わるような激しいLIVEを、結成から現在まで変わることなく行ってきたmy funny hitchhiker。
そして私はLIVEを観るごとに確信へ変わったことがある。
Disorder これがmy funny hitchhikerの本質だと。
だから、ALを作っていると聞いたとき、私はどのような方法論でmy funny hitchhikerのsoundを、構築するのだろうか?と期待と不安を膨らませALの完成を待っていた。
そしてついに届いたmy funny hitchhikerの1st AL「Two muffs beat as one」
近藤君が楽しそうにファズギターを弾いてる姿が浮かぶ。
それを周平君とヒロ君が「しょうがねーなー」と笑いながら見守ってる姿が浮かぶようなALタイトル。最高だ。
soundについてはLIVEを再現できているのだろうか?と少しばかりの懸念がありつつ1曲目「風と花」を聴く。
123.123 のカウントから続くリフ。
その瞬間からラストの「スープはいかが?」まで心臓のドキドキが止まらなかった。
そしてその感覚を回答に変えるため何度も何度もリピートを繰り返した。
「あの花が咲く瞬間を覚えているから」(Music)
「海が歌う青さを僕らは知っているから」(Love is Life)歌詞はどこか達観した感すらある散文的な詩と
触れれば血が噴き出しそうな生々しい言葉が交互に吐き出されその言葉達が 、「次はあなただよ」と幻影ではなく生身/物体ある塊を己に手渡してくるような感覚すら覚える。だからと言って概念が先行しているわけではなく、むしろそれとは無縁の、感覚的思考が言葉を追い抜いていくのだ。
それはなにより、
この素晴らしいサウンドメイキングが成功している証だろう。my funny hitchhikerのLiveを毎回見ている者からすると、ピーキーでオーセンティックなsoundであったとしても対して驚かないだろう。
しかし「Two muffs beat as one」はそんな私の予想をはるかに超え、非常にユニークなsoundを提示し、見事に成功しているのだ。
なぜユニークなのか?
それは現在の日本のBand soundが未だ、テクノロジーの発達や、どんな環境で聴いても音の「粒立ち」を意識していない(できていない)(ヘッドホン・スピーカー・CD・データ・サブスク等)中でDisorderが本質だと私が思っていたmy funny hitchhikerが見事なsoundを作り上げたという事がユニークなのだ。
なんと逆説的で確信犯な奴らなんだよmy funny hitchhiker。
ローエンドに広がりながらもエッジなサウンドを作り上げて
見事にBand soundとしてアジャストできている。「Music」
「青すぎる空」
「スクリームドリーマー」上記の曲などは
もしかするとアンプから鳴らし、
それをマイクで拾って出してる音ではないのではないか?
あきらかにサブベース(Sub Bass)の音を持ち込んでいないか?ローの重心が下がることでギターの帯域を他の楽器がマスキングしなくなりギターの粒と音がよりクリアに鳴っている。
そして最後に最も特筆すべきはボーカルとドラムの音像であると言いたい。
素晴らしい音像に、唸りながらも感嘆と誇らしさが込みあげてくる。
この音像こそが3ピースバンドの神髄であろうと。2020年 ロックダウンした都市の群像劇とリンクするかのように発表される、my funny hitchhikerの「Two muffs beat as one」
きっと一生、忘れられないALになる。
カズオ・ポッカートニー from 大阪